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【解説】Wi-Fi 6GHz帯の3つのモードと屋外利用の注意点

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  • 1.  【解説】Wi-Fi 6GHz帯の3つのモードと屋外利用の注意点

    Posted Jun 12, 2025 01:55 AM
    Edited by kshimono Jun 12, 2025 05:30 AM

    Wi-Fi 6EやWi-Fi 7により注目を集めている6GHz帯。広幅帯、クリーンな周波数という特性から、オフィス、キャンパス、スタジアムといった大規模エリアでの高品質な無線ネットワークを実現するキーとなっています。

    その中でも、6GHz帯での運用において今までと大きく異なるのが「モードの違い」―LPI、SP、VLP―の違いと、屋外で6GHzを利用が現状どうなのか調べてみました。

    ※ 技適関連はアップデートもされるため、最新情報はFCC、総務省等のドキュメントをご確認下さい。
     本記事で訂正が必要な箇所がありましたら遠慮なくご連絡頂ければ幸いです。

    1. 6GHz帯のモードとは?

    モード 名称 特徴 主な用途 屋外使用
    LPI Low Power Indoor 屋内専用 オフィス、家庭 ❌不可
    SP Standard Power 高出力・AFC要件あり 広域屋内外 ⭕可能(AFC必須、日本ではまだ利用できない)
    VLP Very Low Power 超低出力・携帯用途 AR/VR端末、屋内短距離通信 ⭕条件付き

    LPI(Low Power Indoor)

    • 屋内専用。実際には屋内設置のAPみが使用可

    • 日本では最大EIRP 23 dBm (200 mW相当)

    • 天上設置の業務用APや家庭用ルーターが主な用途

    • AFCは不要

    SP(Standard Power)

    • 高出力で広域カバレッジを実現

    • 以上の利点の代わりに AFCとの連携が必要

    • 日本ではAFCの運用が未整備(2025年6月時点)

    VLP(Very Low Power)

    • 最も低出力。EIRP 14 dBm (25 mW相当)

    • 屋内外を問わず利用可能。屋外利用時もAFCは不要だが通信距離は短い

    • 携帯端末やAR/ヘッドセット用途が主(いわゆるモバイルルータやデザリングなどが想定されている)

    • 米国では移動体での利用のみ。固定設置は不可。

    AFC(Automated Frequency Coordination)とは?

    AFCとは、6GHz帯の屋外利用や高出力運用時に、他の既存システムとの干渉を避けるための自動周波数割当システムです。 Wi-Fi APはAFCサーバーに位置情報を送信し、安全に利用できるチャネルやEIRPを割当してもらいます。

    • SPモードの運用に必須

    • レーダーや地上通信など既存元との共存を実現

    • 日本では未制度化

    2. 屋外でVLP対応APを設置する際の注意点

    VLP対応のAPが日本でもリリースされてます。これにより、AFCが整備されていない国や地域でも6GHz帯を屋内で利用できる可能性が広がっています。

    しかし、屋外でのVLPの運用には以下のような懸念点があるため、それらを理解した上で運用することが求められます。

    ❗ 電波到達距離の限界

    • VLPは出力が非常に低いため(例:EIRP 14dBm)、見通しの良い環境でも数十メートルの到達距離にとどまります。

    • 樹木や建物などによる減衰に弱く、広範囲なカバレッジには不向きです。

    ❗ 固定設置に関する規制

    • 米国(FCC)では、VLPモードでの屋外固定設置は禁止されています。
      [参照] https://docs.fcc.gov/public/attachments/DOC-397315A1.pdf

      "The VLP devices would be required to employ transmit power control, would not be permitted to operate as part of a fixed outdoor infrastructure, and would be required to prioritize operations above 6105 MHz prior to operating between 5925 MHz and 6105 MHz."  

    • 日本では現時点で設置に関しては明確な技術基準が定められていません。

    • ベンダーによってはVLPの固定設置を想定していない可能性があり、電波調整、端末の負荷分散などの基本的な無線機能がVLPに対して最適化することは困難と予想されます。

    ❗ 端末のサポート、ローミングの制限

    • VLPをサポートしてない端末もまだ多くあります。これは個人的には早くサポート端末が増え、テザリングでも利用できるようになってくれることを期待しています。

    • VLPとLPIやSPとのローミング互換性が不十分な端末が存在し、移動時のユーザー体験に悪影響を及ぼす可能性があります。

    ❗ APの設置・設計

    • 通信距離の短さから、6GHzだけを想定すると高密度にAPを配置する必要があります。

    • 5GHz/2.4GHz との併用をする場合、APの配置設計がかなり困難です。今までの5GHzベースで設計すると、6GHz VLPは届かないエリアが大きいため、結果的に5GHzに繋がる可能性が高くなります。5GHzに繋がってくれれば良いですが、端末によってはデフォルトで6GHzを優先して繋がろうとする場合があるため、電波が弱い6GHzに接続を試み、接続環境が不安定になるリスクも想定できます。

    以下はあくまで参考ですが、EkahauでAP-585の5GHz(EIRPは現実的な18dBm)とカスタム設定のVLP AP (EIRP 14dBm)の比較です。
    Ekahauも今見た限りはVLPのAPがなく、チャネル設計などもできそうにありませんでしたので、やはり設計には苦労しそうな気がします。
    恐らくですが、体感的なカバレッジの距離は2〜3倍程度異なり、エリアは4〜9倍くらい違ってきそうです。
    遮蔽物による減衰も考慮すると、カバレッジはもっと小さくなると想定されます。

    上記の通り、せっかく6GHz帯が利用できるようになってきているので、早く屋外を含めどこでも6GHzの恩恵を受けたいのは皆さん同じかと思います。
    VLPの固定設置は課題の方が多いため、早くSPモードで利用できることを期待したいと思います。



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    Keita Shimono,
    Aruba Japan SE Manager & Airheads Leader
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