日本国内の Wi-Fi 7(IEEE802.11be)利用は、2023年12月22日に総務省より公布された省令により認可され、まずはコンシューマー機から市場投入がいよいよ始まっています。
Wi-Fi 6E が国内で利用可能になったのが2022年9月で、一年ちょっとでもう次の規格!?、というスピード感ですが、これから無線LANを導入する場合どっちがいいの?と思われている方も多いと思います。
先に現時点での弊社のスタンス(こちら)をお伝えすると、エンタープライズ環境では「Wi-Fi 7 を待たず、WI-Fi 6Eを広く展開しましょう」です。
加えて、今後 Wi-Fi 7 ならではの特徴を活かせるようなユースケースがある場合は、6E と併用する形で展開していく進め方をオススメします。
その理由を理解するために、まずは Wi-Fi 7 の特徴をいくつかおさらいしましょう。
【特徴その1:320MHzチャネルが利用可能】
Wi-Fi 6/6E までは、最大で160MHz幅まででしたが、Wi-Fi 7 では 6GHz 帯で最大320MHz幅を利用することが可能です。
この最大チャネル幅を利用すれば、これまでの最大幅のさらに2倍の帯域を使えるので、非常に高いスループットを実現することができます。
Wi-Fi 7 のコンセプトは「Extremely High Throughput」(EHT)となり、後述の 4096 QAM などと合わせ、高スループットがフォーカスされています。最大通信速度の理論値としては46Gbps(!)です。
さて、ここで日本国内のチャネル割り当て状況を見てみましょう。
(総務省資料より抜粋 出典:https://www.soumu.go.jp/main_content/000918948.pdf)
日本国内では6GHz帯の利用は現状 5945MHz - 6425MHz の範囲となっており、このなかで確保できる320MHz幅チャネルは図の二つとなります。
ご覧の通り、完全に別々のチャネルではなく、6105-6265MHz の範囲でオーバーラップする(重なる)形のチャネルとなります。
他のAPが近隣になく、クリーンなチャネル帯域を確保できるような環境であれば320MHz幅の恩恵を最大限受けることができます。
逆に、複数のAPを、それぞれチャネルを分けて干渉しないような配置が求められるエンタープライズ環境では、置局設計に工夫が必要となると言えます。
【特徴その2:4096 QAM】
「変調多値数」とも表記されますが、ものすごくざっくり言うと、「デジタルデータであるパケットをアナログに変調して電波に乗せる際に、一つの信号で送信できる情報量」のことです。
Wi-Fi 6/6E までは 1024 QAM (10 bit / symbol) でしたが、WI-Fi 7 ではこれが 4096 QAM (12bit / symbol) となり、1.2倍のピークデータレートの実現が可能となりました。
環境が良ければこの利点を享受できるのですが、ピークに近いデータレートに求められるSNRがかなり高く、実際にはAPと端末間が1-2m程度で発揮できるものとなります。
上述の320MHz幅と合わせ、環境やユースケースを吟味した上での導入検討が必要と考えられます。
【特徴その3:マルチリンク動作】
Multi-Link Operation (MLO) という考え方が新たに追加になりました。
これまでの Wi-Fi の概念としては、端末は 2.4GHz/5GHz/6GHz のいずれかの周波数帯のチャネルに接続して通信するものでしたが、Wi-Fi 7 では新たにこれらを併用する/束ねる仕組みが実装されています。
これがどのように活用されるかは、クライアント側の実装次第となります。
端末側が single radio であれば、干渉度合いなどに応じてダイナミックに周波数帯を切り替える形になり、さらなる遅延の低下や信頼性向上に寄与します。
端末側が multi radio であれば、各周波数帯を束ねる link aggregation として機能し、さらに高スループットを実現することができます。
現状の見通しとしては、多くの端末は single radio であると予想され、multi radio の恩恵を受けるハードウェアは相対的に少ないものと見られます。
この機能については、端末側の実装と普及状況を長い目で見守っていくことになると考えられます。
【その他の特徴】
Wi-FI 7 には他にも、柔軟なチャネル運用を可能にする Preamble Puncturing や Multiple Resource Unit (MRU)、電波空間利用効率化の Restricted Target Wake Time (R-TWT) などの新機能がありますが、これらについてはまた別の機会に触れたいと思います。
このように、Wi-Fi 7 ならではの特徴があり、これらがメリットとなるユースケースには「ハマる」と考えられます。
一つ興味深い調査があり、社員/職員のトレーニングにVRを用いている会社リストが紹介されているこちらを見ると、小売店系や航空会社、自動車会社などで、顧客対応の研修にVRデバイスが活用されているようです。
このような環境にはまさに「低遅延」「高スループット」である Wi-Fi 7 が適していると言えます。
一方で、いわゆるオフィスエリアのような展開であれば、従来の多チャネル置局が引き続き適していると考えられ、6GHz の利用可能な Wi-Fi 6E での展開がこれからも続いていくと予想されます。
結局は「適材適所で」ということにはなりますが、端末の普及度合いを見ながら、様々なお客様環境に適した組み合わせをケースバイケースで検討していければと考えています。
【その他参考資料】
Wi-Fi 7 reference guide
Wi-Fi認定規格の比較(総務省資料より)
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asato
Presales Consultant, Systems Engineer
HPE Aruba Networking
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